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Attorney-Client Privilege
(弁護士・依頼者間の秘匿特権)セミナーについて
弁護士 齋 藤 昌 男
 Attorney-Client Privilege(弁護士・依頼者間の秘匿特権)というのを御存知でしょうか。この件につき、平成16年10月15日に、東京3会の国際委員会主催でセミナーが開催されました。その関心の薄さに驚いている次第であります。
 セミナーは、国生一彦弁護士による日本法の立場、法務省立法担当者による現状の説明、イギリス人弁護士によるイギリスを含めたEU25ヶ国の立場、アメリカ人弁護士による最新の判例を含めたアメリカでの扱いの詳細な説明がありました。その後小林秀之教授を含めたパネルディスカッションがありました。
 その後パーティが開かれましたが、清友会から私が1人、友党からは2弁担当副会長が友党の人であったので、紹介のときに顔を出しただけで後は誰もいませんでした。それに比較して、企業関係者が10数人来ていたのには、企業の方々の関心の深さを窺い知る事が出来ます。
 弁護士・依頼者間の秘匿特権と言うのは、単に渉外事件を扱う弁護士の専門分野ではありません。
 第1に申し上げたいのは、セミナーでも紹介された例として、日本のカメラメーカーが、オートフォーカスの特許侵害で何百億円と言う賠償金を支払った例があります。その時使われた資料がM社の技術者が上司に報告した報告書です。アメリカのディスクロージャーの制度を使ってこの報告書が押収されました。もし社外弁護士に対する報告書であったとしたならば、弁護士・依頼者間の秘匿特権で拒否出来ました(但し、この特権は、アメリカでは社内弁護士には適用されません)。あなたの依頼者の会社で明日にでも起る問題ではないでしょうか。
 第2の問題は、ゲートキーパー問題と密接にからんでいる事であります。ゲートキーパーとは門番と言う意味で、マネー・ローンダリング(資金洗浄),テロ資金,薬物問題に関して、弁護士に報告義務を課す制度を言います。日弁連は当然の事として反対しておりますが、数年後には立法化される予定であり、その際には疑いのレベルでの報告義務制度を阻み、守秘義務の範囲を確保するのが、基本方針と聞いております。日本法では、刑法第134条、刑訴法第105条、第149条、民訴法第197条、第220条が関係してくるところで、特に民訴法第220条の第4号は、弁護士・依頼者間の秘匿特権を意識して規定された条項であると言われています。
 それにしても思い出されるのは、外弁問題であります。2弁において外弁委員会の第2代目の委員長をやらしてもらいましたが、外弁法の9回にわたる改正によって、初期に歯止めをかけた事が殆んど撤廃されてしまいました。現在までに約300名の外国法事務弁護士が誕生しましたが、その後帰国した人もかなり多くいて、現在のところ約150名が日本にいるそうです。
 ゲートキーパー問題は、外弁問題に続いて第2の外圧となる事は間違いありません。しっかりと推移を見守って行きたいと思います。
(平成16年10月20日 記す)
 

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